先日、シネコンでホラー映画『サユリ』を観てきました。監督は『貞子vs伽椰子』や『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズで知られる白石晃士。彼の作品は、独特のホラー要素と人間ドラマが融合しており、今回の『サユリ』もその期待を裏切らない内容でした。今回の映画では、一見シリアスな復讐劇の中に、笑える要素やブラックユーモアも組み込まれており、観客を様々な感情で翻弄します。また、白石監督おなじみの嘔吐するシーンもあります。ゲロがお母さんの頭の上にかかるシーンがあり、深くにも笑ってしまいました。笑うシーンじゃないと思うけど、シュールだったんだよな。笑わせにきてるのか怖がらせにきてるのか難しいところがあるのが白石監督の作品。
ホラー映画『サユリ』
ホラー映画『サユリ』は、2024年8月23日に公開された作品です。監督はホラー映画で実績のある白石晃士が担当し、原作は押切蓮介による同名のホラー漫画です。脚本も白石監督と安里麻里が手掛けています。
物語は、一戸建てに引っ越してきた神木家が、次々と家族を失い、家に棲みつく少女の霊「サユリ」の呪いに巻き込まれるという展開です。家族を失った則雄と、そのおばあちゃんが、サユリへの復讐に立ち向かうという異色のホラー復讐劇が描かれます。
主なキャストには、南出凌嘉(神木則雄役)、根岸季衣(おばあちゃん役)、梶原善(父親役)などが出演しています。サユリの恐怖と戦う家族の絆が見どころの一つです。
幽霊とのフィジカルな対決と物理攻撃
白石監督の作品では、物理的なアプローチで幽霊と対決するという手法がよく使われますが、『サユリ』でも例外ではありません。怨霊「サユリ」は、通常のホラー映画に登場する幽霊とは異なり、ガンガン物理攻撃を仕掛けてきます。この斬新さが、恐怖をより現実的なものとして引き立てています。しかし、やられた体は持病の病気や急性の病でダメージを負った、という体になります。ホラーでありながらアクションのような展開があるのは、白石監督ならではの魅力でしょう。
『怖すぎ!』シリーズファン向けのキャスティング
この映画には、『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』シリーズで市川実穂役を務めた久保山智夏が出演しており、ファンにとってはうれしいサプライズです。彼女の登場シーンは、映画に緊張感を持たせつつも、過去作を知っている観客には少しノスタルジックな感情を呼び起こします。ホラーファンには、シリーズを超えたキャスティングの妙が楽しめる点でしょう。
コワすぎ!シリーズは最終回の戦慄怪奇ワールドが一番おもしろいのですが、ワールドを見る前にコワすぎ!シリーズを2作品ほど観てからワールドを見るのをおすすめします。
サユリでは監督のお家芸のCG感のあるニュロニュロ動く触手みたいな演出も登場。あれ好き。そしてゲロのシーンもシュールでおもしろいです。
ババアの覚醒という最も重要なシーン
『サユリ』のクライマックスは、なんといってもおばあちゃん(根岸季衣)の覚醒シーンです。神木家が次々とサユリの呪いにより苦しむ中で、突如として覚醒したおばあちゃんが家族を守るため、幽霊に立ち向かう姿は、ホラー映画においても異色です。観客はこの意外性に驚かされつつ、同時に「こんな覚醒、あり得るのか?」という疑問も抱くことでしょう。確かに、ホラー映画では覚醒や超能力的な要素は付き物ですが、ここまでフィジカルに変化するのは、少し非現実的な感じもしました。
ジェンダー問題など
近藤華
物語の中で、ホラーの緊張感を和らげる存在となっているのがヒロインの近藤華。彼女はBL好きですが、最終的にがっつり主人公と恋愛関係になるという驚きがありました。彼女は一見くらい性格の持ち主かと思いきや、思い切ったこともやるタイプで、頼もしく、かわいいので住田を演じる近藤華のファンになってしまいそうです。映画の重苦しい雰囲気の中でも、彼女の存在が救いとなります。
近藤華さんは、2007年生まれの日本の女優さんです。大きな瞳とチャーミングな笑顔が特徴で、その透明感のある美貌と演技力で注目を集めています。
デビューのきっかけ
2021年にマクドナルドのCMで木村佳乃さんと共演し、芸能界デビューしました。このCMでの自然な演技が話題となり、一気に注目を集めました。
多才な才能
・演技力: デビューから数々のドラマや映画に出演し、その演技力の高さを評価されています。特に、菅田将暉さんの楽曲「ギターウサギ」のMVでは、出演者だけでなくクリエイティブ・ディレクターを担い、脚本、アニメーション作り、衣装、小道具まで手がけるなど、多才な才能を発揮しました。
・表現力: ミュージカル「フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~」に出演するなど、演技だけでなく歌やダンスなど、表現力の幅を広げています。
・創作活動: 脚本やアニメーション作りなど、創作活動にも興味を示しており、今後の活躍が期待されます。
さらに白石監督の作品では、近年ジェンダー問題が扱われることが多く、今回の『サユリ』にもその要素が含まれています。幽霊や呪いといったホラー要素に加えて、性やジェンダーに関する暗喩が作品全体にちりばめられている点が、彼の作品の特徴です。白石監督の作品では性的なテーマが増加傾向にありますが、「白石晃士の決して送ってこないで下さい」でもその傾向が見られました。「白石晃士の決して送ってこないで下さい」では、以前このブログで取り上げた沖田遊戯が、最低な役で登場しています。また、映画紹介系YouTuberとして知られるかいばしら出演しています。
主人公の幽霊に対する攻撃(ネタバレ注意)
この映画のユニークな点は、主人公が幽霊に対してド下ネタを言うシーンです。この場面は、一部の観客には笑いを提供しつつ、家族で観るにはちょっと気まずいと感じることも。ホラー映画としては、異色のユーモアを取り入れている部分ですが、家族向けというよりは大人向けの演出です。白石監督は、こういったブラックユーモアや挑発的なシーンを作品に盛り込むことが多いですが、今回の『サユリ』ではその要素が特に目立っています。
また、幽霊が「性」に弱いというのは昔からあるホラーの設定ですが、今回のサユリに関しても有効な攻撃です。ただし、「色情霊」と呼ばれるタイプの霊に対しては、性や生を象徴する下ネタが全く効かないということも忘れない方が良いでしょう。
このような性に関する幽霊のエピソードは、実際にお笑い芸人のケンドーコバヤシが語っていた体験談ともリンクします。以前、ケンコバの女性の幽霊に性的に襲われたという話を聞いたことがある気がするのですが、「襲ってほしい」と思った瞬間から、その霊が現れなくなったという逸話は、幽霊と性の関連性を語る上で興味深いものです。このエピソードを思い出しながら『サユリ』を観ると、幽霊に対する下ネタ攻撃のシーンが単なるギャグに留まらず、深いブラックユーモアとして楽しめる部分かもしれません。
下ネタとサユリの怨霊化
映画の中で、下ネタが幽霊への攻撃手段として使われていますが、サユリの怨霊化の背景を知ると、この攻撃は単なる笑い事では済まない複雑な要素を持っています。彼女がなぜ怨霊となり、どのような経緯で家族を呪う存在になったのかを知ると、その攻撃手法は一見コメディのように見えて、非常にデリケートな問題をはらんでいることがわかります。
この映画は、ホラーというジャンルに留まらず、社会的なテーマやジェンダー問題、そして人間の性についても問いかけている点で、白石監督らしい挑戦的な作品と言えるかもしれません。
まとめ
『サユリ』は単なる漫画原作のホラー映画ではなく、様々な要素が複雑に絡み合った異色のホラー作品です。幽霊に対する物理攻撃や、下ネタを駆使したユーモア、そしてジェンダー問題や家族の絆といったテーマが交錯し、観客に多くの考えを巡らせる作品。ホラーが苦手な人でも、この作品に込められた人間ドラマやブラックユーモアに注目すれば、新しい視点で楽しむことができるでしょう。ホラー映画を超えた『サユリ』の魅力に、多くの人が共感すること間違いありません。
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