2022年に公開された映画「ザ・メニュー」がアマプラで配信開始されており、ずっと観たかった映画だったので観てみました。
今回は「ザ・メニュー」の感想を書いていきます。
ザ・メニュー
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ザ・メニュー』は、2022年に公開されたアメリカのサスペンス映画です。物語は、太平洋の孤島にある高級レストランを舞台に、レイフ・ファインズ演じるシェフが提供する驚愕のフルコースを中心に展開します。アニャ・テイラー=ジョイやニコラス・ホルトなど豪華キャストが共演し、スリルとユーモアが交錯する作品です。映画はPrime Videoで視聴可能で、現代社会の風刺も含まれています。
物語は、マーゴとタイラーという若いカップルが、予約が取れないことで知られる孤島のレストラン「ホーソン」に訪れるところから始まります。シェフのスローヴィクは、彼らに対して特別な料理を用意しますが、次第にその料理には恐ろしい秘密が隠されていることが明らかになります。マーゴは料理に感動するタイラーとは対照的に、次第に不安を感じ始めます。この映画は、食文化や富裕層への風刺を含んでおり、ブラックユーモアが散りばめられています
キャスト
映画『ザ・メニュー』の主なキャストは以下の通りです。
レイフ・ファインズ – ジュリアン・スローヴィク役
アニャ・テイラー=ジョイ – マーゴ役
ニコラス・ホルト – タイラー役
ホン・チャウ – エルサ役
ジャネット・マクティア – リリアン役
ジョン・レグイザモ – 映画スター役
リード・バーニー – リチャード役
ジュディス・ライト – アン役
ポール・アデルスタイン – テッド役
エイミー・カレロ – フェリシティー役
アルトゥーロ・カストロ – ソーレン役
ロブ・ヤン – ブライス役
マーク・セント・シア – デイブ役
アニャ・テイラー=ジョイ
「ザ・メニュー」で目を惹くのはやはり主役であるアニャ・テイラー=ジョイの美しさと演技です。もともと好きではありましたが、この映画を見てさらに彼女の美貌の虜になりました。
アニャ・テイラー=ジョイ(Anya Taylor-Joy)は、1996年4月16日生まれのアメリカ合衆国出身の女優であり、モデルでもあります。彼女はフロリダ州マイアミで生まれ、アルゼンチンとイギリスで育ち、英語とスペイン語のバイリンガルです。Netflixのドラマシリーズ「クイーンズ・ギャンビット」でのベス・ハーモン役で広く知られ、ゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞しました。地毛はブロンド。
主な出演作(リンクのクリックでAmazonプライムビデオに飛びます。クイーンズ・ギャンビットは書籍)
- ウィッチ(ロバート・エガース監督)
- スプリット、ミスター・ガラス(M・ナイト・シャマラン監督)
- クイーンズ・ギャンビット(Netflixのミニシリーズ)
- ラストナイト・イン・ソーホー(エドガー・ライト監督)
- ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー(ピーチ姫の声で出演)
- マッドマックス:フュリオサ(ジョージ・ミラー監督)
アニャ・テイラー=ジョイは顔がビョークに少し似てて好きです。出演作では主役ではないものの、ラストナイト・イン・ソーホーが白眉だと思います。可憐でピュアな田舎者、トーマシン・マッケンジー演じるエロイーズとの対比として描かれるアニャ・テイラー=ジョイ演じるサンディーの美しさは、筆舌に尽くし難いものがありました。
美食と恐怖が絶妙にブレンドされた独特の世界観
『ザ・メニュー』は、普通のグルメ映画とは一線を画し、アメリカの格差社会や食文化への批判を含むサイコスリラーとして評価されており、特に、シェフの狂気的な魅力や閉鎖空間での恐怖感が巧みに描かれており、観客に強烈な印象を与えます。また、料理の美しさとその背後にある暗いテーマとの対比が特徴的です。
高級レストラン「ホーソン」を舞台に繰り広げられる本作は、一見するとグルメ映画の装いを纏いながら、徐々にサスペンス要素を強めていく異色作です。「世にも奇妙な物語」を彷彿とさせる展開は、時に恐怖を感じさせるほどの緊張感を持って描かれており、コメディー要素はほとんどないと個人的には思います(コメディーというジャンルもこの作品には含まれているようですが)。
陸の孤島という閉鎖的な空間で、通信手段も絶たれた状況下、コース料理の進行とともに展開される物語は、観る者を飽きさせることなく一気に引き込んでいきます。シチュエーション自体は「閉ざされた空間での極限状態」というソリッドシチュエーションスリラーは、ある意味でよく見る設定ですが、それを料理のコースに準えて展開するという斬新な構成が、本作の大きな特徴となっています。
シェフ・スローヴィクが提供する料理の数々は、その見た目の美しさと精緻な技術に目を見張るものばかり。梅干しや昆布といった日本の食材までもが登場し、キャストたちが「UMEBOSHI」という言葉を不慣れな様子で発音する姿は、日本人視聴者にとって興味深い場面となっていて、海外に梅干しってないんだ、と少し驚きました。料理の映像美は見事の一言に尽き、思わず食欲をそそられ、ワインを傍らに置いて鑑賞したい映画でもあります。
特にシニカルなのは、2品目として出される「パンのないパン皿」です。富裕層の客たちにパンを食べる資格はなく、付け合わせだけが提供されるという皮肉に満ちた一皿は、本作の副次的なテーマを象徴的に表現しています。
富裕層への痛烈な風刺と物語の展開
本作の特徴的な点は、ターゲットとなる富裕層への制裁が、単なる理不尽な暴力ではなく、それぞれの人物の行いに応じた因果応報として描かれていることです。嫌味な演出は随所に見られるものの、被害者となる人々の言動や背景が丁寧に描かれることで、観客は不快感を覚えることなく物語に没入することができます。
物語の展開は、アリ・アスター監督の「ミッドサマー」との類似点が随所に見られます。徐々に不穏な雰囲気が漂い始める展開や、ラストの炎上シーンなど、両作品には共通する要素が多く存在します。ミッドサマーで描かれた熊の着ぐるみが、本作ではマシュマロに置き換えられているのも興味深い共通点です。
特に「混乱」と題された料理で副料理長が自死するシーンは、ミッドサマーの老人の崖降りシーンを彷彿とさせ、レストラン内の雰囲気が一変する重要な転換点となっています。ただし、その後の展開で描かれる「鬼ごっこタイム」の意図については、やや唐突な印象は否めません。
また、タイラーの最期があっけない形で描かれたことや、シェフとの耳打ちシーンの内容が明かされないまま終わることなど、いくつかの疑問は残ります。まあ、耳打ちで何を言われたかは特に考察しようとは思えないもので、なんらかの落胆する言葉を言われただろうなぁ、くらいの印象です。
スプラッター映画の「マーターズ」の耳打ちのシーン以上に何を言われたのか気になる映画はまだ見たことがないです。
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マーゴの生還と映画の真髄
主人公マーゴが最後に生き残れた理由については、本作の中で最も考察を呼ぶポイントの一つです。彼女は他の客とは異なる立場にあり、また料理に対する純粋な愛情を持っている点で特別な存在として描かれています。特に、高級フルコースの中でチーズバーガーを注文するという彼女の行動は、シェフの心を動かす重要な転換点となりました。
彼女の生還については、脱出時に都合よく古いボートが見つかるなど、いわゆるデウス・エクス・マキナ的な印象もありました。なぜ鬼ごっこの際に他の男性たちがそのボートを見つけられなかったのかという疑問も残りますが、これらは物語全体の魅力を損なうほどの瑕疵とはなっていません。
映画のクライマックスで、マーゴが船上でチーズバーガーを頬張りながら、遠くに燃え上がるスモアを見つめるシーンは、本作の真髄を象徴する見事なエンディングとなっています。彼女がメニューの紙で口を拭うという何気ない仕草が最高ですね。かっこいい。
本作は、シェフがここまでの強行手段に出た動機についての説明が十分でない気がしたり、いくつかの疑問点を残してはいます。しかし、それらは深く考察すれば考察するほど新たな発見があり、かつ気軽に楽しむこともできる作品としての魅力を損なうものではありません。
「奨学金なしで大学に進学した」という理由だけで制裁を受けるキャラクターの存在は、本作に垣間見える数少ないブラックユーモアとして機能しており、シリアスな展開の中で絶妙なバランスを保っています。あそこだけ面白かった。
「ザ・メニュー」は、料理映画としての要素とサスペンス要素が見事に調和し、観る者を飽きさせることなく最後まで引き込む、バランスの取れた傑作と言えるでしょう。よくわからない部分が残るものの、それすらも作品の魅力として受け入れられる、稀有な作品に仕上がっています。
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